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先日ふらりと夜の散歩に出た時の事
「あの」
振り向くと目の大きな女性が声を掛けてきた
「あの、私、きれい?」
顔を大きく覆ったマスクから見られる
様子からは綺麗な顔立ちが想像できる
「え、きれいですよ」
女は表情もなくうつ向いた
俺も数歩下って自分の腰に手をやった
「これでも?」
そう言いながらマスクを外した女のクチは
口角が耳の辺りまでありそれは裂けているとも言えるクチだった
しかしクチで生業を続けているのだろうか?
形は良く何より発色の良いグロッシーな口紅は夜の街灯に照らされ
色気とも思える美しさに映えていた
暫くの沈黙
女の大きなクチは微かに震えていた
艷やかな唇が照らされた街灯に反射していたので良くわかった
女とは目線は合わずやや下向きに俺の方に向けられ止まっていた
そこには俺の小さな弟がいた

· · SubwayTooter · 1 · 0 · 2

先程女がマスクを外している時に
俺は自分のスエットを下ろし
そこにいる小さな弟を露にしたのである
上を見上げている弟の縮れた毛が
夜風に吹かれて二度三度となびいていた
弟が女にコクリと会釈をした瞬間
女は我に返り時速120キロの速さで去っていった
女が走り去る時になにか小さな物を落としたので近づいてみるとそれはお祭りの縁日で売られている様なひよこの形のベッコウ飴だった
「ベッコウ飴か
もっといいモノ舐めればいいのに…
キレイな人だったよな?」
俺の小さな弟も頷いた
俺はスエットを上げて歩き出した
「寒くなったな帰ろう」

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